ドイツ・ミュンヘン郊外の「ニュンヘンブルグ城」内に、世界的にも有名な「美人画廊」があります。この存在と出会ったことが、私が陶板画へ向かうきっかけでした。
「ニュンヘンブルグ城」は代々バイエルン選帝侯が夏の離宮にしてきた城です。広大な敷地と、ニュンヘンブルク焼きの陶磁器コレクションも有名ですが、特に王ルートビッヒ一世の「美人画廊」は圧巻です。
画家ヨーゼフ・シュティラーが王の依頼でミュンヘン王宮に飾る美女の肖像画を描いたのが始まりです。1827年から1850年にかけて完成されたそれらの肖像画はモデルの地位に関係なく、王ルートビッヒ一世の美的理想にのみ従って描かれたと伝えられています。
城下の街娘も、各国から嫁いだ王妃も、みな平等に「美へのあこがれ」として、壁を飾っています。40数人の圧巻の肖像画は、それぞれの女性の人生と共に、鑑賞する私たちに迫ってきます。
この美の部屋に出会ったとき、折りしもポートレートを独学で学び始めていた私は、陶板画にこの感動を表現していこうと、決めたのでした。畏れ多くも、王の美人画を夢のお手本に、ライフワークに描き続けていこうと思っています。